明治時代、西洋国家と対等な立場を築くため、日本は近代的価値観のもと国のあらゆる制度・文化・歴史を再考しました。明治22年、現在も続く世界的美術研究誌『国華』第一号冒頭に「夫(そ)れ美術は国の精華なり」とあるように、美術も再考され日本美術史がつくられていきました。そんな中、江戸文化を象徴する浮世絵は、西洋の新たな印刷術の導入により衰退していきます。しかし、世界に類のないその高度な木版技術は発展を遂げ、日本の再考に伴う新たな舞台の上で躍動し、伝統と近代が、東洋と西洋がない交ぜの明治という時代に、美しく確かな彩りを添えていたのでした。
春期展では、最後の浮世絵師・月岡芳年とその弟子たちの作品から、最大200度摺りにおよぶ超絶技巧の『国華』木版、近代文学口絵、菊池容斎の『前賢故実』や近代日本画壇黎明期を支えた絵師たちの木版作品についてもご紹介します。明治150年の節目となる本年、全100点を超える本展覧会が、現代に繋がる明治のイメージを再考する一助となれば幸いです。
歌川国芳の弟子・月岡芳年は、芥川龍之介・三島由紀夫・横尾忠則など多くの文化人にも愛され、江戸とは異なる人体造形の先進さ、構図や画題の奇抜さなど、今も多くの展覧会や書籍などで好評を博しています。明治前期の社会の動向に対応し、多くの弟子たちと共に浮世絵界をリードした鬼才・月岡芳年の「かっこいい」明治浮世絵からスタートです!
天皇を中心とした日本独自の近代国家観が形成される中、明治10年代に入ると崇高な古代神話や、道徳的規範とされる歴史上の人物を象徴的に描く「歴史画」が流行しました。第二章では、その先駆的存在となった芳年やその弟子などの「歴史画」の他、明治歴史画家のバイブルである菊池容斎『前賢故実』や容斎の弟子たちの木版作品もご紹介致します。
『国華』第一号冒頭に「夫(そ)れ美術は国の精華なり」とあるように、国の美術史を構築することは国家観や歴史観の形成にも通じるものでした。国家による日本美術史の編纂に先駆けて、明治22年岡倉天心を中心に作られた東洋・日本美術研究誌『国華』。カラー写真の無い時代、各地に広がる日本の美術作品を研究・紹介するため、超絶技巧を駆使して作らせたその木版図版は、江戸浮世絵が20回前後の摺りであるのに対して、驚異の200度摺りを始め50~60回の摺りを要し、それ自体が美術品と言われるほど!第三章では、この『国華』木版画を多数展示します。
明治前期は、洋装の男女や鉄道・洋風建築物などを描き、文明開化を象徴する「開化絵」が流行しました。しかし、明治10年代後半頃から、激しく移り変わる社会の動向に対し、在りし日の江戸の情緒を懐かしむ風潮が庶民の間に高まっていきました。
第四章では、江戸風俗をテーマにした浮世絵の他、日本最初のグラフ誌といわれる『風俗画報』などについてもご紹介します。
明治中期、岡倉天心などの動きに賛同し時代を支えた絵師たちの中には、それまでに浮世絵や挿絵など在野で活躍し地位を築いてきた菊池容斎や浮世絵の系譜に連なる絵師たちもいました。
第五章では、主に浮世絵に連なる絵師たちの美人画をご紹介。近代日本画壇の一角としてこれまでの浮世絵とは異なる画風を磨き上げた絵師たちと、明治の荒波にもまれ一層繊細さを増した日本の伝統木版美術の見事なシンクロが生み出した、明治後期の伝統木版文化の一端をご紹介します。
明治150年 春期展 「日本を再考せよ!~芳年・国華・美人画を中心に~」
会期 平成30年4月21日(土)~6月17日(日)
開館時間 10:00~17:00
休館日 毎週月・火曜日(祝日は開館)
観覧料 大人500円(400) 高校生・中学生以下無料
( )は10名様以上の団体割引料金
八戸市柏崎1丁目8-29 ☎0178-32-7737
後援/八戸市教育委員会 ㈱デーリー東北新聞社 ㈱東奥日報社
コミュニティラジオ局BeFM
春期展関連イベント(クリックするとPDFで開きます)
今年の明治150年展は、国内の再考に注目する「春期展」と海外への展開に着目する「秋期展」の表裏一体の内容です。
秋期展も、どうぞよろしくお願い致します。