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明治150年 秋期展「世界が認めた日本の美~万博・古邨・花鳥画を中心に~」



 明治時代、西洋国家と対等な立場を築くため、日本は近代的価値観のもと国のあらゆる制度・文化・歴史を再考しました。明治150年となる今年、春期展では歴史の再考に伴い生まれた月岡芳年などの「歴史画」、近代文学と画家の接点として花開いた木版口絵、浮世絵とは一線を画す明治後期の洗練された美人画など国内の近代化に伴い生まれた作品群をご紹介しました。

 今回の秋期展では、春期展とは表裏一体をなす、明治時代に欧米で高い評価を受けた作品や絵師に関わる伝統木版画をご紹介。『北斎漫画』から万国博覧会を舞台に世界に紹介された絵師や豪華美術画集、海外向けに制作された花鳥画や英文版日本昔噺、さらには京都で作られた着物図案集など、初出展作品が目白押し!

 忘れられた明治の伝統木版文化、現在再評価されつつある絵師の中に、近代日本がたどり着いた“日本の美”の一端をご覧頂きたいと思います。




   




19世紀後半、自国の技術や文化を世界にアピールする大イベントとなった万国博覧会。明治政府も、1873年ウィーン万博に公式初参加して以降、陶磁器などの工芸品と共に多くの絵画を出展しました。その中には、当時日本代表でありながら、後に忘れられ、現在再評価が進む絵師たちが沢山います。なかでも、渡辺省亭は、1878年日本画家として初めてパリへ長期滞在し、印象派の画家や美術史家たちと交流をもった絵師。柴田是真・尾形月耕などの絵師たちの木版画作品についてもご紹介します。





岡倉天心が力を入れ、当時超一流の彫師・摺師によって生まれた東洋・日本美術研究誌『国華』の多色摺木版図版。「それ自体が美術品」と高く評価されたこの『国華』の手法は、その後明治33(1900)年のパリ万博向けに作られた、日本最初の官製美術史『稿本日本帝国美術略史』にも用いられ大賞を受賞、本書は各国君主や美術関係者に配布されました。

また、100度を超える超絶技巧の彫り・摺りを要するこの分野で、国華社と並び称される審美書院は、明治後期、同様の手法を用い豪華美術画集を出版、セントルイス万博で金賞を受賞するなど高く評価されました。日本の和紙や伝統木版技術の凄さをも示すこれらの作品は、英文解説が付され、欧米の研究家・愛好家の日本美術理解に貢献しました。





幕末の動乱と東京遷都による沈滞ムードの払拭が緊急課題となっていた京都府は、明治4(1871)年西本願寺で日本最初の博覧会を行いました。この京都博覧会は、京都が最も得意とする日本の伝統工芸に対する危機感をも反映したもので、新技術に触れ知見を深めると同時に、新製品を宣伝・販売する場となりました。そんな中、京都の絵師たちには、博覧会への肉筆画の出展の他、伝統工芸品への下絵や図案の仕事も増えていきます。これにより、伝統工芸品は、美術作品へと一層高められ、国内外で高い評価を受けていきました。また、ジャポニスムの中で、これらの花鳥画や図案は欧米の美術界に影響を与え、アール・ヌーボーやアール・デコと呼ばれる様式が生まれ、世界に広がっていきました。





明治後期の欧米において、日本の花鳥画は、葛飾北斎や歌川広重の浮世絵に始まり、幸野楳嶺・渡辺省亭などが手掛けた絵画や美術工芸品への高い評価により、広く認知されていました。そこで、版元は、日本画家・小原古邨を起用し一般愛好家も入手しやすい木版花鳥画を企画。近代的発展を遂げた伝統木版技術に支えられた、古邨の情趣溢れる花鳥画の世界は、日本特有の美的表現として欧米で高い人気を博しました。その後、祥邨と号を替え、大正・昭和前期に隆盛した新版画運動を代表する一人として活躍。現在でも、欧米の多くの美術館が作品を所蔵し、日本でも、今年、茅ヶ崎市美術館で、来年は原宿の太田記念美術館で特別展が開催される他、関連書籍も刊行され注目を集めています。








明治150年 秋期展「世界が認めた日本の美~万博・古邨・花鳥画を中心に~」

会期    平成30年9月22日(土)~11月11日(日)
開館時間  10:00~17:00
      (10月27日(土)は、落語独演会のため16:30まで)
休館日   毎週月・火曜日(祝日は開館)
観覧料   大人500円(400) 高校生・中学生以下無料
      ( )は10名様以上の団体割引料金
八戸市柏崎1丁目8-29   ☎0178-32-7737

後援/八戸市教育委員会 ㈱デーリー東北新聞社 ㈱東奥日報社
   コミュニティラジオ局BeFM


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