八戸クリニック街かどミュージアム

特別展 秋期一斉公開 浮世絵・初三郎・映画ポスター展


今回の秋期展は、コレクションの中心である3分野をそれぞれ展示致しております。
軽妙洒脱かつ情感豊かな世界を描き、明治時代人気の日本画家で浮世絵師の「尾形月耕」の浮世絵。種差にアトリエ兼別荘を築いた初三郎の鳥瞰図は、全長4m60cmの肉筆「高野山図絵」(高画質複製)や10数冊しか現存が確認されていないグラフ誌「HIROSHIMA」の他、鳥瞰図で「日本の世界遺産を巡る」旅気分を味わって頂ければと思います。また、今年東京で映画祭も開催された昭和の大女優「若尾文子」の映画ポスターなども約100点展示しております。
三者三様の内容を、どうぞお楽しみ下さい。

近代再発見シリーズ

多様な文化や価値観の共存が求められる現代。西洋と東洋の価値観に激しく揺さぶられる中で、それまでの枠に収まらない多彩な展開をみせていた近代の絵師や作品に改めて目を向けることで、激動の近代から日本文化を再考するシリーズ。

シリーズ1 ~尾形月耕~

尾形月耕は、特定の師を持たず、近代出版界及び近代日本画壇の黎明期に実践により腕を磨き、独自の軽妙洒脱かつ情感豊かな明治風俗画を確立しました。当時から国内外で人気を集め、門下から多くの近代日本画家を輩出した絵師です。自らも踊りを嗜む月耕の作品は、派手さはないものの、そっと心の琴線に触れ和やかな心持ちにさせる魅力があります。


この版本は、月耕35才から44才までの10年間に渡り全3編21巻制作され、絵手本としてまた一般の人が手に取って楽しむ百科画集として人気を集めました。「北斎漫画」の明治版とも言われるその内容は、山水・花鳥・人物・道具類さらには妖怪や伝説など人間世界の森羅万象を描いた風俗百科であり、「い・ろ・は・に・ほ・へ・と・・・」と順番に描かれた絵の総数は1600図を超えます。
古代から明治まで様々な図様が掲載されたこの版本は、独学による研鑽と挿絵など多くの実践によって人気絵師へと上り詰めた月耕ならではの大作と言えます。今回展示している作品は、摺りの状態も非常によく繊細な月耕のタッチを十分に伝えるものとなっています。図様の遊び心と共にその軽妙な筆致もご堪能下さい。


全100図の連作として制作されたと考えられますが、現在確認できるのは管見では完成95図と輪郭線のみの未完成3図です。題名や出版年が不記載であるため不明な点が多い上に、1図当たりの制作数も少ないと思われ、一般的にはあまり知られていません。しかし、国内外の月耕ファンには評価が高い作品です。
時には全体に溶け込むように、時には豪快に鎮座する多様な富士の姿を、人々の営み・自然・伝説などと共に情緒豊かに描きだしています。じっくり味わうとその軽快で優しい筆致や色彩と、構図の大胆さのバランスが絶妙で、月耕の魅力を存分に伝える連作です。



今年、「明治日本の産業革命遺産」として国内で19件目の世界遺産が決定しました。これまで登録された日本の世界遺産には、吉田初三郎が大正から昭和初期に鳥瞰図の中で描いた場所が多く含まれています。
今回は、京都・奈良を始め厳島神社・日光・富士山・法隆寺などいつくかの世界遺産を初三郎の鳥瞰図で巡ってみましょう。


初三郎は、終戦の翌年広島図書からの依頼を受け被爆地広島に入り、5ヶ月に渡る数百人の証言をもとに、9点の作品を描きました。その連作を掲載した英語版グラフ誌「HIROSHIMA」は、現在その存在が10数冊しか確認されていない希少なものです。戦後70年の今年、当ミュージアムでも広島市現代美術館「俯瞰の世界図」展や雑誌「美術手帖2015年9月号」、機関誌「photographers’ gallery press no. 12」などへ画像提供をさせて頂きました。
今回、このグラフ誌の中から世界遺産となっている原爆ドームを描いた作品を公開いたします。


弘法大師空海による開創から1200年の歴史をもつ高野山。2004年に「紀伊山地の霊場と参詣道」として吉野・大峰、熊野三山及び各参詣道と共に世界遺産に登録されました。高野山の有する数々の宝物は明治より調査が行われ、 日本の歴史学の大家で文化財政策の重要人物・黒板勝美東京帝国大学教授が中心となり、大正10年霊宝館が建設されました。今回公開する「高野山図絵」は、この霊宝館の建設に向け、かねてより黒板教授に勧められ制作された記念すべき作品。 また、その大きさのみならず「大正広重」の落款を持つ肉筆画としても貴重な作品です。



京都・奈良の文化財は、それぞれ寺社仏閣など複数の構成資産によって世界遺産に登録されています。
今回は、京都・奈良の鳥瞰図数点を拡大展示。初三郎の奇想天外な構図に頭をひねりながら、旅行気分を味わってみませんか?



今年『若尾文子 映画祭―青春』が東京で行われました。上映された映画の本数はなんと60本。150本を超える出演作があればこそです。「若尾文子〝宿命の女〟なればこそ」も出版され、女優・若尾文子にとって、今年は記念すべき年であるといえるのではないでしょうか? さて、当館で持っている若尾文子出演作ポスターなどの資料は100作品を超えます。今回の展示はいつものように半裁ポスターのみではなく、四つ切、プレス、チラシなども入れ、より多くのものを展示致します。 映画祭で行われた人気投票で1位と4位に入った、むつ市出身の川島雄三監督の「しとやかな獣」(1962)・「女は二度生まれる」(1961)の他、本格デビュー作「死の街を脱れて」(1952)や八戸でロケを行った「幻の馬」(1955)など、日本が誇る”ファム・ファタール”女優の魅力を存分にお楽しみ下さい。

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