日本の伝統木版画の技術をもとに、日本人の原風景を感じさせる作品を描き「旅情詩人」と称された川瀬巴水(1883-1957)。八戸市の種差海岸に別荘兼アトリエを築き、近代鳥瞰図という独自の画法で、日本中の観光名所を描いた吉田初三郎(1884-1955)。旅行ブームが沸き起こった大正~昭和前期の同時代を生き、日本中を旅して風景画を描いた1才違いの2人の絵師の作品を中心に、同分野の絵師の作品などもご紹介致します。
川瀬巴水と吉田初三郎は、共に大正~昭和前期に活躍した絵師です。鳥瞰図は、江戸時代にも浮世絵で多くの作品が作られていますし、新版画は、浮世絵の技術をベースに作られたものです。本展では、序章として2人が活躍する以前の、江戸・明治の浮世絵もご紹介します。特にその技術面に関しては、この度、十三代市川団十郎の襲名を記念し、代々の団十郎を描いた浮世絵を展示致します。
川瀬巴水は、昭和7年9月から11月までの間、北海道・東北を旅し、その時の写生を中心にした「日本風景集 東日本篇」という連作を制作しました。東北では、八戸・青森・十和田の作品も多く含まれています。今回は、本シリーズを中心に、その他、東京などの作品も展示します。
また、吉田初三郎は工房の弟子たちと共に分業体制を構築し、常に全国各地から依頼を受けて、旅行案内鳥瞰図を制作しました。今回は、巴水や同時代のその他の絵師などの作品と関連付けながら、各地の鳥瞰図を展示すると共に、初三郎が出版した雑誌等の刊行物などもご紹介致します。
川瀬巴水が活躍した新版画という新たなジャンルは、当時日本の伝統的な木版技術による浮世絵複製品の制作が多くなってしまった業界に、その技術を活かし、時代にあった新作の木版画を生み出したいという版元・渡辺庄三郎の想いから始まりました。巴水以外にも、その想いに共感し素晴らしい作品を制作した絵師たちが存在します。
また、吉田初三郎が築いた近代の旅行案内鳥瞰図という分野も、当時大変人気となり、初三郎の作品を真似た贋作も作られるほどでした。初三郎の弟子が独立したものや、新たに鳥瞰図に挑戦する絵師なども現れ、様々な絵師による独自の鳥瞰図が、全国の観光地などでたくさん見られるようになりました。
本展では、高橋松亭やエリザベス・キース、ノエル・ヌエットなど外国人も含む当時の新版画や、金子常光や前田虹映などの初三郎以外の鳥瞰図など、同時代の多彩な作品もご紹介致します。
開館10周年記念 秋期展「旅する絵師-同時代を生きた川瀬巴水と吉田初三郎ー」
会期 令和4年9月24日(土)~令和4年11月13日(日)
開館時間 10:00~17:00
休館日 毎週月・火曜日(祝日は開館)
観覧料 大人500円(400) 高校生・中学生以下無料
( )は10名様以上の団体割引料金
八戸市柏崎1丁目8-29 ☎0178-32-7737
後援/八戸市教育委員会 ㈱デーリー東北新聞社 ㈱東奥日報社
コミュニティラジオ局BeFM